あらすじ
ISBN: 9784801914513ASIN: 4801914519
居酒屋経営者の裏の顔はー超暴利な闇金業者。錆びついた漁船が停泊するひなびた漁港。路地裏の一角でひっそり営む居酒屋「銭形」。店主は銭形兄弟の富男と静香。表向きは居酒屋だが、深夜0時から闇金業を始める。トサン(10日で3割)という違法な高金利で金を貸し、苛烈な取立てで債務者を追い込むのが銭形兄弟のスタイル。ある日、ボクサー崩れの男・八雲が「銭形」に入れてくれと申し出てくる…。地方でくすぶるキャバクラ嬢や半ぐれ、ヤクザなど、金の魔力に取り憑かれたアウトローな連中たち。返せるあてのない借金を抱え、最後の手段として居酒屋「銭形」を訪れた人々の運命を描く“闇金”ピカレスク小説。

穏やかな日常の機微と、剥き出しの生存本能を同時に描き分ける稀代のストーリーテラー、それが永森裕二という表現者の本質です。彼は脚本家としての鋭い感性と、プロデューサーとしての冷徹なまでの市場感覚を併せ持ち、日本のエンターテインメント界において極めて特異な地位を確立してきました。 彼の足跡を辿れば、観客の心の琴線に触れる独自の「癒やし」と、極限状態が生み出す「スリル」という対極の要素が、見事なまでに共存していることに驚かされます。動物たちの愛くるしさを時代劇や現代劇の枠組みに鮮やかに溶け込ませ、息の長いシリーズへと昇華させるその手腕は、単なるヒット作の量産に留まりません。そこには、言葉に頼らずとも伝わる情愛と、人間の業を見つめる温かな眼差しが常に流れています。一方で、若手俳優たちの登竜門ともなった緊迫の心理戦を描く作品群では、社会の縮図とも言える鋭い人間ドラマを提示し、次世代の才能を世に送り出す土壌を築き上げてきました。 キャリアの軌跡から浮かび上がるのは、企画の段階から一貫して物語の質をコントロールし、作品の世界観を強固に構築する盤石なプロデュース能力の高さです。手がける作品の多くが長きにわたってファンに支持されるのは、彼が単なる流行を追うのではなく、普遍的な娯楽の本質を捉えているからに他なりません。物語に生命を吹き込み、それを確実に観客の記憶へと刻み込む永森裕二の筆致は、これからも日本映画界において、独自の輝きを放ち続けるでしょう。