辻村深月という作家は、常に「名付けられない感情」に寄り添い続けてきました。本書は、そんな彼女が自身の原体験を糧に、言葉という繊細な刃物であり救いでもある道具の扱い方を説く、魂の対話集です。単なる教訓ではなく、かつての自分を救うように紡がれた言葉の数々は、読者の心の奥底に眠る痛みを優しく解きほぐし、明日への静かな勇気を灯してくれます。
児童向け連載が基でありながら、大人こそが自らの内なる子供と向き合わされる圧倒的な筆致が見事です。物語の魔法を信じる彼女だからこそ書ける、綺麗事ではない「言葉の真実」がここにはあります。自分だけの言葉を見つけ、誰かに手渡す尊さを再認識させてくれる本作は、混迷の時代を生き抜くための、最も優しく強靭な心の処方箋と言えるでしょう。