あらすじ
K医科大学附属病院の耳鼻咽喉科医・京橋は、病院の売店で働く茨木と親しくなる。誰にも話したことのない自分の生い立ちや医者になった理由、そんなプライベートを初めて話した夜、茨木は優しく頭を撫でてくれた。いつしか茨木の笑顔に癒やされ、彼の手の感触を思い出し、会いたいと思う自分に戸惑うが...。消灯時間も過ぎた病院でひどく落ち込んでいる様子の茨木に、このまま泣かせて欲しいと抱きしめられて―。隠れS系売店員×純情耳鼻咽喉科医の院内ラブ。
ISBN: 9784576080284ASIN: 4576080288
作品考察・見どころ
医療現場の機微を知り尽くした椹野道流氏が描く本作は、エリート医師という仮面を剥がされた一人の男が、無垢な魂の救済を求める切実な祈りの物語です。夜の静寂に包まれた病院という閉鎖的な聖域で、生と死、そして孤独を見つめてきた著者だからこそ到達し得た、圧倒的な情感の密度に震えます。 茨木という一見穏やかな男が秘める支配的なまでの優しさは、京橋の抱える空虚を鮮やかに暴き、同時に至高の安らぎで満たしていきます。指先の感触や微かな吐息に込められた、言葉を超えた心理的攻防こそが文芸的白眉であり、二人の魂が溶け合う瞬間の美しさは、読者の心に深く、抗い難い爪痕を残すことでしょう。