本書は単なる実用書の枠を超え、峻厳な自然と対峙する人間の精神の在り方を説く思想書としての深みを湛えています。著者の大関氏、柏氏、浜島氏という山を知り尽くした三名の筆致からは、自然への畏敬の念が静かに、しかし力強く伝わってきます。知識という名の装備を整えることが、いかに山という異界における自由を担保するか、その本質を鋭く突いている点が最大の見所です。
行間に滲むのは、万全の準備こそが自然を楽しむための最高の贅沢であるという、プロフェッショナルならではの矜持です。各章に記された教示は、過酷な山嶺で命を守り抜いてきた先達たちの知恵の集大成に他なりません。読者は頁を捲るごとに、自らの足で大地を踏みしめる喜びと責任を再認識させられるでしょう。山歩きの第一歩を、魂の巡礼へと昇華させてくれる至高の一冊です。