桜庭一樹の筆致が冴え渡る本作は、山陰の旧家を舞台にした、戦後日本の巨大な神話です。千里眼を持つ祖母から孫へと繋がる三代の軌跡は、土俗的な幻想と近代化の熱狂、そして現代の空虚を見事に織り交ぜています。血脈に縛られつつも己の生を刻む女たちの情念が、壮大な叙事詩として読み手の魂を強く揺さぶります。
映像版ではその豊かな色彩と世界観が具現化されていますが、原作の醍醐味は、歴史の濁流に呑み込まれる個人の内面を緻密に追える点にあります。活字でしか表現し得ない重厚な時間旅行は、映像の躍動感と共鳴し合うことで、この一族の物語をより多層的で忘れがたいものへと昇華させているのです。