原田マハ
20××年、相馬凛子は42歳の若さで第111代総理大臣に選出された。鳥類学者の夫・日和は、「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えることを決意。妻の奮闘の日々を、後世に遺すべく日記に綴る。税制、原発、社会福祉。混迷の状況下、相馬内閣は高く支持されるが、陰謀を企てる者が現れ...。凛子の理想は実現するのか?
原田マハが描く本作の真骨頂は、政治という荒波を「鳥の目線」で捉え直す瑞々しい感性にあります。野心とは無縁な鳥類学者の夫・日和が綴る日記形式は、権力闘争の殺伐とした空気を温かな人間賛歌へと変質させます。凛子が掲げる理想が、単なる綺麗事ではなく、愛する家族を守るための切実な祈りとして響く点に、文学としての深い気品が宿っています。 映像版ではコメディ要素や華やかな演出が際立ちますが、原作小説にはテキストだからこそ到達できる「沈黙の深層心理」が息づいています。日和の葛藤や凛子の孤独が、行間からじわりと溢れ出し、読者の心に静かな勇気を灯すのです。二つのメディアを横断することで、理想を現実に変えるための多角的な葛藤をより重層的に味わえる、まさに現代の希望の書と言えるでしょう。
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実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。