あらすじ
ISBN: 9784344015142ASIN: 4344015142
開業医だった父とそりのあわない横山良多は失業中のこともあり、ひさびさの帰郷も気が重い。良多の妻と息子、明るい姉の一家も来て、老いた両親の家には久しぶりに笑い声が響く。得意料理を次々にこしらえる母と、相変わらず家長としての威厳にこだわる父親。ありふれた家族の風景だが、今日は、15年前に亡くなった横山家の長男の命日だった。

現代の日本映画界において、最も深い慈愛と鋭い観察眼を併せ持つ至高のヒューマニスト、それが是枝裕和です。カンヌ国際映画祭の頂点であるパルムドールをはじめ、数々の国際的な栄誉に輝く彼は、今や世界が新作を最も熱望する映画作家の一人となりました。早稲田大学を卒業後、テレビドキュメンタリーの世界でキャリアを切り拓いたその出自は、彼の映像言語に唯一無二のリアリズムをもたらしています。デビュー作から一貫して不在や家族の在り方を問い直し、誰も知らない子供たちの孤独や、血縁を超えた絆の揺らぎを、静謐ながらも力強い筆致で描き出してきました。キャリア統計が示す63作品におよぶ膨大な足跡と、平均評価6.8という極めて高い水準は、ドラマやドキュメンタリー、さらには犯罪というジャンルを越境しながら、常に人間性の深淵に肉薄してきた執念の結実です。近年ではフランスや韓国の才能とも共鳴し、国境を越えた映画製作の新たな地平を切り拓いています。制作集団「分福」を主宰し、次代を担う作り手を育むその真摯な姿勢は、映画という文化の未来を繋ぐ灯火そのものです。社会の裂け目から零れ落ちる小さな声を拾い上げる是枝監督の眼差しは、混迷を極める現代において、私たちに寄り添う一筋の光として輝き続けています。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。