伊坂幸太郎
「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。その管理下、住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は、衆人環視の中で刑に処されてしまう。不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒ずくめの「正義の味方」、ただ一人。ディストピアに迸るユーモアとアイロニー。伊坂ワールドの醍醐味が余すところなく詰め込まれたジャンルの枠を超越する傑作!
伊坂幸太郎が描く本作の真髄は、正義の名を借りた暴力が蔓延るディストピアの恐怖と、そこに風穴を開けるユーモアの共存にあります。密告が美徳とされる歪んだ社会で理不尽に抗う人々の姿は、現代の危うさを射抜く鋭い批評性を帯び、絶望の中でも軽妙な対話が物語を鮮やかに彩ります。 貫かれているのは集団心理の醜悪さと、個の気高さです。黒ずくめのヒーローという象徴を通じ、生々しい人間の業と善意の葛藤を極上のエンタメへと昇華させた筆致は圧巻。読後の胸に刻まれる深い余韻こそが、伊坂文学の真骨頂であり最大の魅力です。
伊坂 幸太郎 は、日本の小説家。千葉県松戸市出身。