あらすじ
「なあ、俺と、新しくカルト始めない?」
好きな言葉は「原価いくら?」
現実こそが正しいのだと強く信じる、超・現実主義者の私が、
同級生から、カルト商法を始めようと誘われてーー。
世界中の読者を熱狂させる、村田沙耶香の11の短篇+エッセイ。
表題作は2021年シャーリィ・ジャクスン賞(中編小説部門)候補作に選ばれました。
文庫化にあたり、短篇小説「無害ないきもの」「残雪」、エッセイ「いかり」を追加。
書き下ろしエッセイである「書かなかった日記ーー文庫版によせて」を巻末に収録。
〈収録作〉
「信仰」「生存」「土脉潤起」「彼らの惑星へ帰っていくこと」「カルチャーショック」「気持ちよさという罪」「書かなかった小説」「最後の展覧会」「無害ないきもの」「残雪」「いかり」
〈文庫版読者への著者メッセージ〉
『信仰』は小説と随筆を混ぜた、私にとっては少しいつもと違った佇まいの本でした。
私が存在しない世界の主人公の言葉と、随筆に存在する言葉が同じ本の中に、戯れ合うように混ざりながら存在するのは、私にとってとても奇妙な感覚でした。
文庫にするにあたって、また新しい言葉が本の中に詰め込まれ、滑り込んで、時間も、言葉も、さらに奇妙に膨張したような感覚で、出来上がった美しい装丁のご本を眺めています。
もし、この少し不思議な本をおそばに置いていただけたら、とてもうれしいです。
作品考察・見どころ
村田沙耶香が描くのは、現実という名の薄氷を冷徹に踏み抜くような、戦慄の読書体験です。本作は、論理と正義を信奉するあまりに孤独な魂が、カルトという異界へ惹かれていく皮肉を通じ、社会が強いる「常識」という名の集団催眠を鮮烈に暴き出します。読者は、自らの立脚点が崩れ去るような心地よい眩暈に翻弄されるはずです。 狂気すら透明な手つきで結晶化させる文体は、私たちが何を「正気」と定義しているのかという根源的な問いを鋭く突きつけます。ページをめくるたびに世界の輪郭が変容し、読了後には見慣れた景色すら異様に映る、まさに文学という名の劇薬。魂を根底から揺さぶるこの衝撃を、ぜひ全身で体感してください。