湊かなえが描く本作は、閉鎖的な島という舞台がもたらす愛憎と救済を鋭く抉り出しています。美しい海に囲まれた楽園が、時に息苦しい檻へと変貌する瞬間の心理描写は圧巻です。日本推理作家協会賞を受賞した「海の星」を筆頭に、全編に漂うのは、故郷への複雑な情念と、血の繋がりに縛られた人々の切実な慟哭です。
著者特有の鋭利な筆致で綴られる、忘れ難き記憶を巡る物語は、読む者の魂を激しく揺さぶります。過去と現在が交錯する先に浮かび上がる真実が、単なる絶望ではなく、遠い光のような希望を予感させる点にこそ、本作の文学的な真髄が宿っています。逃れられない場所で懸命に生きる人々の体温を感じさせる傑作です。