綿矢りさ
同情は美しい、それとも卑しい?美人の親友のこと、本当に好き?誰もが心に押しこめている本音がこぼれる瞬間をとらえた二篇を収録。デビューから10年、綿矢りさが繰り広げる愛しくて滑稽でブラックな“女子”の世界。
綿矢りさが描くのは、聖域なき女の心理戦です。本作は「同情」という美徳の裏に潜む支配欲や優越感を容赦なく暴き出します。他人の不幸を糧にする醜さを、鋭利な刃物のような文体で描き切る手腕は圧巻。自意識の檻に閉じ込められたヒロインの滑稽さが、読む者の胸を深く突き刺します。 嫉妬や虚栄心をこれほど軽妙かつブラックなユーモアで昇華させた作品は稀有でしょう。読後は自分の中にある「かわいそう」という感情の正体を問い直さずにはいられません。毒を孕んだ美しさに満ちた、文学的挑発の一冊です。