本作の真髄は、血の繋がりを超えた「生の軌跡」の継承にあります。養父ジグロの影を追い続けてきたバルサが、彼の面影を宿す少女と出会うことで、凍てついていた過去が再び熱く鼓動し始める。上橋菜穂子が描く、異界と現世が溶け合う幽玄な世界観の中で、運命に抗いながらも大切な者を護り抜こうとするバルサの魂の震えが、読む者の心に鮮烈な情熱を灯します。
流水琴が奏でる調べは、己の源流と向き合い未来へ踏み出すための聖なる儀式です。緻密な文化人類学的考察と剥き出しの人間ドラマが融合した本作は、シリーズが到達した一つの極致。過去を抱きしめ、風と共に歩み続ける者たちの気高い生き様を、ぜひその目で見届けてください。