あらすじ
一人娘・真由が誘拐されて一か月、役場の仕事に復帰した白石千賀は、入札業者の不審な電話に衝撃を受ける(「談合」)。誘拐事件から二か月後、同じ町内に住む二十四歳の会社員・鈴木航介が死体で発見され、不思議なことにその表情には笑みが浮かんでいた。同僚の久保和弘はその一週間前、経理部員である航介から不正を指摘されていた(「追悼」)。誘拐事件を追っていた刑事・渡亜矢子は、地道な捜査を続け、ついに犯人像に近い人物にたどり着くが...(「波紋」)。すべてのエピソードが一つの線になり、事件の背景に「誰かが誰かを守ろうとした物語」があったことを知る(「再現」)。誘拐された幼女はその家で何を見たのか!?ベストセラー『傍聞き』の気鋭作家が「優しさの中の悪意」を世に問う。
ISBN: 9784094087727ASIN: 4094087729
作品考察・見どころ
長岡弘樹氏が描く世界は、鋭利な刃物で心の深淵を抉り出すような緊迫感と、不器用な情愛が同居しています。本作は誘拐事件を起点に、一見無関係な断片が鮮やかな一本の「線」へと収束していく構成美が圧巻です。単なる謎解きに留まらず、沈黙の裏に隠された「誰かを守りたい」という切実な祈りが、読者の倫理観を静かに揺さぶります。 特筆すべきは、人間の善意が生んでしまう予期せぬ歪み、すなわち「優しさの中に潜む毒」の描き方です。緻密な伏線が回収される瞬間、私たちは事件の真実だけでなく、人間の哀しき本質と対峙することになるでしょう。ミステリーの枠を超えた、魂の救済と再生を巡る深遠な人間ドラマを、ぜひその目で確かめてください。