あらすじ
40言語以上で翻訳された『本と猫』続編!
幸崎ナナミは、中学二年生。重い喘息のため、放課後はもっぱら、ひとりで図書館に通う日々を過ごしている。その図書館から最近、本がなくなっているらしい。ある日、館内で「書棚に潜む影」を見かけ、そっと後を追いかけると見慣れたはずの通路の奥が、青白い光に包まれていた。「近づかぬ方が良い」。振り返るとそこにいたのは翡翠色の目をした猫であった。
危険を諭す猫をよそに、光の中へと踏み出すナナミ。書棚に囲まれた通路を抜けると現れたのは、巨大な壁がそびえ、銃を構えた兵士が守る城であった。中ではなんと、本が燃やされていたのだ。
これまで、持病のためにさまざまなことを諦めてきたナナミだが、大切な本が燃やされていくのを黙っているわけには行かない。
「人は歳を重ねた分だけ、視野が広がるとは限らない。大切なものは心で見なければいけないのに、心の目はあっという間に曇ってしまう。子供の頃はあんなに大切にしていた本を、時とともに忘れてしまうように、気づかないうちに大事なことをどんどん失って、それだけ身軽になったつもりでいるんだよ」
新たな迷宮へ、ようこそ。
【編集担当からのおすすめ情報】
「これは夏川氏の挑戦の書である」--國分功一郎(哲学者)「解説」より
前作『本を守ろうとする猫の話』は世界40言語以上で翻訳出版!
本作もすでに世界26言語で翻訳出版!名作シリーズ第2弾がついに文庫化!
すべての“本好き”に捧げる、哲学ファンタジー!
作品考察・見どころ
夏川草介氏が描くこの物語は、単なるファンタジーの枠を越え、現代人が失いつつある「言葉への敬意」を問う鋭い批評性を備えています。主人公ナナミの喘息という身体的制約は、ままならない現実の象徴であり、だからこそ彼女が本の世界で見せる魂の躍動は、読む者の胸を強く揺さぶります。翡翠の目をした猫との対話を通じて語られる哲学的な洞察は、効率化が進む社会で曇ってしまった私たちの「心の目」を研ぎ澄ます、至高の羅針盤となるでしょう。 実用性が重んじられる現代において、本書は「形のない価値」の中にこそ真理が宿ることを喝破しています。本が燃やされる迷宮の光景は、文化の深みを忘れた現代社会への痛烈な警鐘であり、同時にそれを守ろうとする少女の意志は、すべての読者への挑戦状でもあります。本作が世界中で愛される理由は、忙しない日常に埋もれた「本当に大切なもの」を再び愛し直すための、純粋な勇気を与えてくれるからに他なりません。