あだち充氏の真骨頂は、台詞のないコマに流れる「余白」の美学にあります。第5巻では、妹と恋人、二人のみゆきの間で揺れ動く心理が、季節の移ろいと共にさらに鋭利に描き出されます。言葉にできない微細な感情を風景だけで語らせる技法は、もはや漫画を超えた純文学の域にあると言えるでしょう。
本作の魅力は、若さゆえの残酷さと美しさが同居している点です。誰かを想うことが同時に誰かを傷つけるという予感。その甘美な痛みが、軽妙な叙情性によって読者の胸を深く締め付けます。読み進めるほどに私たちは自身の青春を重ね合わせ、切なさと愛おしさの迷宮へ誘われるのです。