前田司郎
10年以上聴き続けている音楽。もう会えないと思っていた人。奇跡なんて他人事だと思ってた私たちのあの日の特別なあれ。
前田司郎が描く世界は、日常に潜む「奇妙な断絶」に満ちています。本作の核心は、再会した友人とすき焼きを食べるという空虚な目的の中に、取り返しのつかない時間の残酷さを描く点にあります。10年という歳月の重みが、滑稽な会話を通じて切なく、かつ鮮烈に読者の胸を突き刺します。 著者自らが監督した映画版は、俳優たちの絶妙な「間」でテキストの余白を補完しています。活字で孤独に深く沈み、映像で不条理な可笑しさを享受する。このメディア間の往復こそが、私たちの何でもない日常を「極限の物語」へと昇華させるのです。
劇団・五反田団を主宰。「ジ、エクストリーム、スキヤキ」で映画監督デビュー。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。