江口夏実が描く地獄は、凄惨な刑場であると同時に、あまりに人間臭い「官僚機構」の体現です。第十巻で見せるEU地獄との対立は、異文化の壁をシュールな笑いへ昇華させる知的な筆致が冴え渡っています。伝説の悪魔さえ組織論の枠組みにハメ込む批評精神は、既存の宗教観を鮮やかに解体する文学的快楽に満ちています。
映像版の躍動感に対し、原作には視覚以上に雄弁な「言葉の毒」が凝縮されています。行間に潜む膨大な知識と冷徹な皮肉を、静止画の美学の中でじっくり咀嚼できるのは漫画ならではの贅沢です。両メディアを往復することで、地獄という名の日常に潜む普遍的な滑稽さが、より鮮明に浮き彫りとなるでしょう。