椹野道流
「母さ...やめ...」振りほどこうともがく、まだ少年だった天本を、母は信じられないような力で押さえつけていた。「...消えて」細い指が、ぎりぎりと天本の首に食いこむ。「消えてしまいなさい、おまえなど...!」過去の悪夢を見はじめた天本のもとに、ベトナムから届けられた父の手紙。いま、失われた記憶の扉が、ゆっくりと開きはじめる―。