小野不由美
学校の七不思議にまつわる怪談やマンションの部屋で聞こえる不自然な音、真夜中に出るという噂の廃病院で見た白い人影、何度しまってもいつの間にか美術室に置かれている曰くつきの白い画布……。小野不由美が初めて手掛けた百物語。文芸評論家・千街晶之氏は「この世のあちこちに人知れず潜んでいる怪異が、不意にその姿を顕す。日常があり得ざる世界へと暗転する一瞬を確かに捉えてみせた傑作怪談」と単行本発売時、推薦文を寄せた。文庫解説を担当した稲川淳二氏は、「怪談とはどういうものかを知りたければ、この本を読めば分かります」と絶賛。「作品全体の質感を一言で表現するなら、”うっすらとした闇”です。」(解説文より)。山本周五郎賞受賞傑作ホラー『残穢』(新潮文庫)と内容がリンクしていると話題の本書。『残穢』は、実写映画化(監督:中村義洋『予告犯』『白ゆき姫殺人事件』、出演:竹内結子 橋本愛)、2016年1月30日(土)公開! 「幽」公式サイト http://www.kadokawa.co.jp/yoo/
現代日本のエンターテインメント界において、静謐な恐怖と緻密な異世界構築の双方で頂点に立つ孤高の語り部、それが小野不由美です。彼女の筆致は単なる物語の枠を超え、読者や観客の深層心理に深く根を下ろす圧倒的なリアリティを湛えています。ティーン向けのミステリーで頭角を現した初期から、壮大なスケールで描かれる異世界戦記、そして土地に刻まれた呪縛を紐解くドキュメンタリータッチのホラーに至るまで、その歩みは常に表現の地平を広げる挑戦の連続でした。特に、目に見えない不条理を言語化し、映像へと昇華させる際の執拗なまでの論理的裏付けは、作品に類を見ない重厚感と説得力を与えています。キャリアを通じて研ぎ澄まされてきたその作家性は、単なる娯楽としてのホラーやファンタジーではなく、歴史や民俗学に裏打ちされた知的な探求へと深化を遂げました。安易なカタルシスを拒絶し、因果の連鎖を冷徹に見つめるその視座は、現代の映像文化において稀有な知性を象徴しています。過去の因縁を現代の物語として再生させる卓越した構成力は、後進のクリエイターたちに多大なインスピレーションを与え続けており、彼女が紡ぎ出す深淵なる闇は、これからも観る者の魂を静かに、しかし激しく揺さぶり続けることでしょう。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。