大型のハリケーンが接近しようとしている。風がうなり、雨もしだいに激しさを増すなか、ケイティは四輪駆動車を海沿いに走らせていた。メーン州を直撃することはあるまいと思いながら。すると突然、目の前を白っぽい幻影がよぎり、それに誘われるように車は断崖の縁で宙ぶらりんに!もしもその時アイルランドなまりの力強い男の声が耳元で聞こえなかったら、彼女はあまりの恐怖に失神していただろう。だが声の主の姿は濃い夕やみに包まれ、どんなに目をこらしても、ただぼうっとした人影にしか見えなかった。その顔がこの世のものとも思えぬほど美しく、その目が深い海の色をしているのに気づいたのは、不気味に静まり返った彼の屋敷に着いてからだった。