定住の概念さえ忘れ、彷徨い続けた半生。妻と別れ、三人の子とともに東京の雑踏へ漕ぎだし、六、三六四点の写真とともにその名を世に知らしめた。秋の山肌のような藻場、人間界のしがらみなど無縁に、自由に、残虐に、生きとし生けるものたち...。カメラを武器に反動化する世相を相手に闘ったが、メディアの自己規制により絶望感は募る一方だった。やがて日本人であることすら忌避し、瀬戸内の無人島に移り住んだ。生を憧憬しながら、寄せては返す甘美な死の誘惑の波。その波に幾度となく足をすくわれながら、写した責任を果たすため、一度は捨てた写真の世界に舞い戻り、ドキュメント写真の新しい活路を切り開いた。伝説の報道写真家・福島菊次郎、一葉万里の半生記。