あらすじ
気がついたら食べ物の作品ばかりを書いていました。藤の花房、岩ぢしゃなどは、今、私の暮らしの周辺を彩っている熱風や棒降りの雨からの贈物。いそぎんちゃく、鰻などは、生まれ育った有明海の銀色に続く潟や大雨の時だけ水が流れる谷川からの贈物。キムチ、餃子、粽などは、友人達が作り方を伝授してくれた贈物。そして。これらの食べ物に育てられた私自身の喜びと願いと哀しみのつぶつぶ。これらのひとつひとつを拾い上げるようにして、このたびの詩集を編みました。
ISBN: 9784812007495ASIN: 4812007496
作品考察・見どころ
本作は、食を単なる消費ではなく、生と記憶が交錯する祈りの儀式として描き出す魂の詩集です。有明海の潮香や友のぬくもり、激しい雨風がもたらす自然の恵みが、言葉という器に鮮やかに盛り付けられています。著者が「喜びと願いと哀しみのつぶつぶ」と呼ぶ断片は、読者の五感を激しく揺さぶり、日常に埋もれた生命の輝きを鮮烈に浮き彫りにします。 一粒の餃子やひと房の藤に宿る、言葉にならない情念に触れるとき、私たちは自らを形作る記憶の豊かさに驚かされるはずです。単なる食記を超え、生命の根源的な歓喜と孤独を謳い上げる本作は、乾いた心を潤す至高の文学的滋養に他なりません。今すぐこの食卓につき、その深遠なる滋味を心ゆくまで堪能してください。