あらすじ
「いいかげん優太を解放してやれ」。夫・博行の言葉に麻子は我を忘れて家を飛び出した。思えば李里香が嫁として水沢家にやってきてからというもの、夫との仲もぎくしゃくし、息子の優太にいたっては失業してしまった。すべては李里香が原因なのだ―。その李里香はキャバクラで働いていたことを隠していたり、失踪している男の名刺を持っていたり、怪しいところだらけだ。いったい水沢家はどうなってしまうのか?失踪事件は李里香とどう関係しているのか?李里香の本当の狙いとは?話題の“嫁と姑”の心理サスペンス、ついに終章へ。
ISBN: 9784803004274ASIN: 4803004277
作品考察・見どころ
本作は、伝統的な嫁姑問題の枠組みを鮮やかに解体し、現代社会の家庭に潜む狂気を描き出した心理サスペンスの傑作です。平穏な日常の裏側で、積み上げられた疑念が剥き出しになっていく過程は圧巻の一言。著者は、登場人物の細微な心理描写を通じて、私たちが無意識に縋っている良き家族という虚飾がいかに脆いものであるかを鋭く突きつけてきます。 物語の中核を成すのは、正体不明の嫁への不信感から崩壊していく姑の孤独な戦いです。息子を守りたいという本能が執着へと変貌していく様は、読者の倫理観を激しく揺さぶるでしょう。血縁の危うさと、他者を真に理解することの絶望的な難しさを描ききった本作は、読み終えた後も消えない鋭い棘を心に残す、比類なき人間ドラマに仕上がっています。