あらすじ
性格のない人間・如月空子。彼女の特技は、“呼応”と“トレース”を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」たけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世界は様相を変え始めるー。性格のない「からっぽ」の空子の一生と人間社会の終着点を描いた、全世界注目のディストピア大長編!
ISBN: 9784087718799ASIN: 4087718794
作品考察・見どころ
村田沙耶香が描く「からっぽ」の主人公・如月空子は、我々が信じる自我という幻想を根底から揺さぶります。性格を持たない彼女の視点を通し、社会の常識という名の歪んだ記号が暴かれる様は圧巻です。個人の消失が世界の真理を照らし出すという逆説的な構造は、正に村田文学の真骨頂です。 人類の終着点を見据えた本作は、既存のディストピアを超え、生命の本質を問う黙示録です。虚無に同化するうちに自らの輪郭さえ溶け出す感覚。世界そのものが変容していく圧倒的な筆致に、魂を射抜かれるような戦慄と恍惚を覚えずにはいられません。