ジョルジュ・ペレックが描くのは、単なる移住者の記録ではありません。それは、名前を剥奪され記号へと還元された人々が「不在の記憶」を呼び覚ますための壮絶な試みです。自由の女神の背後に広がる絶望と希望が入り混じるエリス島を、著者は執拗な眼差しで解体し、言葉の断片によって再構築していきます。
本書の真髄は、歴史の激流に埋もれた個人の微かな呼吸を掬い上げる詩学にあります。寄る辺なき彷徨の感覚が、リストや断片的な記述を通じ読者の胸に鋭く突き刺さるでしょう。記憶を辿る行為そのものが文学的巡礼へと昇華された、言葉の深淵に触れる傑作です。