あらすじ
1912年、明治最後の年に刊行された本書は、明治、大正の精神医学史の一次史料であり決定版である。実際に見聞した教育制度の成立、大学講座の創設、精神病院および収容施設の整備、精神障害者の処遇、関連法制度の変遷といった近代日本における精神医療の制度的・社会的基盤を初めて体系的に描き出した記念碑的業績である。
先覚者・呉秀三とその調査研究を支えた樫田五郎は、医療施設の実態、行政制度の構造、欧州精神医学の受容過程を克明に検討することで、日本の精神医学が医学の一分野として成立してゆく黎明期の相貌を鮮やかに示した。本書はまた、のちの画期的調査『精神病者私宅監置の実況』へと結実する実証研究の原点をなすとともに、近代国家形成の過程において精神医療と精神障害者がいかなる位置を与えられてきたのかを照射する精神医学史上の古典でもある。その歴史的名著を、平易な現代語訳と周到な注解とともに現代の読者の前にあらためて甦らせる。
※本書は青弓社より二〇一五年に刊行された『[現代語訳]わが国における精神病に関する最近の施設』を復刊したものである。
現代語訳者によるまえがきー明治の精神医療:隔離と拘束の歴史/金川英雄
第1章 わが国における精神病に関する最近の施設/医学博士 呉 秀三
コラム1 なかなかできなかった精神科医局と森鷗外「独ドイツ逸日記」
コラム2 呉はなぜ「この国に生まれた不幸を重ねる」と言ったのか
第2章 精神病学を教授研究する設備
コラム3 明治の薬物療法
コラム4 精神科が克服した病、進行マヒ
第3章 精神病者を収容または処置する設備
1 官公立精神病者収容所
2 私立精神病院
3 白痴教養所
4 医療上の目的でない精神病者収容所
コラム5 精神病者慈善救治会
コラム6 中村讓と台湾の精神医療
第4章 精神病者の待遇と処置
1 総論
2 病院での処置
3 東京府てん狂院の構造その他
4 東京高尾山
5 個人の家に精神病者がいて守視し看護する方法
6 精神病者の輸送と意見
7 精神病者慈善救治会
コラム7 朝鮮済生院精神病部
コラム8 精神科で全く触れられない明治の大津事件
第5章 明治初年以降の精神病に関する法律または命令の変遷
1 精神病者の監護に関するもの
2 精神病者監護法
3 精神病者の罪責能力、分能力などに関するもの
4 精神病者に対する犯罪
5 廃疾者などの犯罪
6 年齢
7 幼者に対する犯罪に関して
8 民法上の規定に関して
9 精神病の軽度の者と聾者啞者
10 精神病者の賠償責任
11 精神病の鑑定に関するもの
コラム9 衛戍病院と精神病室
コラム10 隔離と拘束
第6章 日本における精神病学の日乗/医学士 樫田五郎
コラム11 アジア精神科医療の夜明け
おわりに・あとがき 金川英雄

