あらすじ
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。
朗々とした唄、琵琶の音が闇夜に響く。
何者かが男に伝える、二十余年の歳月を要して編み上げた物語。
その名は──。
平氏棟梁・平清盛が四男・知盛。
清盛最愛の息子とまで呼ばれた彼だが、幼い頃から病弱で出世は遅かった。
だがそんな彼にも源氏という時代の荒波は容赦なく襲い掛かる。
弟分で「王城一の強弓精兵」と呼ばれた教経と共に否応なく前線に立つ知盛。
没落に向かう平氏を盛り返すことはできるのか。
直木賞作家による、熱き血潮が巡る「真」平家物語!
ISBN: 9784758447140ASIN: 4758447144
作品考察・見どころ
今村翔吾は、歴史の敗者に光を当て、その魂の咆哮を現代に蘇らせる稀代の語り部です。本作は平家滅亡の悲劇を単なる諸行無常の物語としてではなく、運命に抗い、泥臭くも高潔に生きた人間たちの血の通った記録へと昇華させています。病弱ゆえに影に甘んじていた知盛が、滅びゆく一門の重責を背負い、静かなる覚悟を宿していく過程は、読む者の胸を熱く焦がすことでしょう。 知盛と教経、対照的な二人の絆と、茜色に染まる時代の黄昏が重なり合い、切なくも美しい叙事詩を形作っています。これは単なる歴史小説ではありません。終わりゆく時代の中で、それでも己の生を全うしようとする者たちの誇りを描いた、魂を震わせる傑作です。古びた古典のイメージを鮮烈に塗り替える、今村文学の真骨頂がここにあります。