あらすじ
生贄には犯人がなるべきだ。――犯人以外の全員が、そう思った。 9人のうち、死んでもいいのは、――死ぬべきなのは誰か?一晩だけ過ごす予定で入り込んだ地下建築。だが、入り口を大岩に塞がれ地下からは水が迫る。ここから出るためには誰かが残って犠牲にならなくてはならない。それなのに、生贄に最も近かった裕哉が殺害され、その後も殺人が続く。タイムリミット目前に判明した犯人、そして残酷な選択が!!
ISBN: 9784757594739ASIN: 4757594739
作品考察・見どころ
夕木春央が放つ本作は、単なるクローズドサークルを超えた、人間の倫理観を根底から揺さぶる極限の「天秤」の物語です。極限状況下で剥き出しになるのは、美徳ではなく、生への執着という名の醜悪な本能。生贄を誰にするかという究極の選択を通じて、読者は正義や平等という概念がいかに脆いかを見せつけられます。 論理的でありながら冷徹な筆致は、読者を逃げ場のない地下へと引きずり込みます。犯人を特定することが救済ではなく、死へのカウントダウンへと直結する絶望的な構造。緻密に張り巡らされた伏線が収束するその刹那、私たちは物語の前提そのものが反転する衝撃を味わうでしょう。これは知性による残酷な遊戯であり、ミステリ史に残る衝撃作です。