安野モヨコが描く本作は、かつての恋愛狂騒曲が老いと現実という牙を剥く、残酷でいて愛おしい人間賛歌です。第六巻では、滑稽なまでの幸福への執着が、鋭利な筆致によって一種の生存哲学へと昇華されています。主人公・シゲタカヨコの迷走は、単なるコメディを超え、読者の心に綺麗事ではない剥き出しの業を突きつけます。
かつての実写映像が放った弾けるような躍動感に対し、紙の上では心理描写の濁流とも言える情報の密度が白眉です。映像が外側の熱狂を捉えるなら、原作は内なる孤独を深く抉り出します。両メディアを往還することで、青春の残り香と現在の渇きが鮮烈なシナジーを生み、物語に究極の立体感を与えているのです。