渡辺淳一/五谷翔/船山馨/片岡義男/石川喬司/森村誠一
【目次】「北海道とミステリーの風土」渡辺淳一「葡萄」渡辺淳一「白い神々」五谷翔「破獄者」船山馨「朝になったら、タッチミー」片岡義男「カマルグの白い馬」石川喬司「溯死水系」森村誠一・*本書は1986年に小社より刊行された文庫『札幌ミステリー傑作選』を底本とし、再編集のうえ文庫化したものです。
北の大地、北海道。この地が持つ静謐な狂気と広大な孤独が織りなすミステリーの真髄が、名匠たちの筆致で浮き彫りにされています。渡辺淳一が描く人間の原罪的な情念や、森村誠一が追求する社会の歪みが、凍てつく景色の中に鮮烈に溶け込んでいます。北海道という土地そのものが一つの生命体として、読者の内面に潜む不安や欲望を静かに、かつ執拗に刺激し続けるのです。 本書の白眉は、単なる謎解きに留まらず、北国の峻烈な風土が精神に及ぼす影響を多角的に描き出した点にあります。船山馨や片岡義男らが紡ぐ、冷徹かつ叙情的な描写は、紙幅から雪の匂いや風の音さえ感じさせる圧倒的な臨場感を放ちます。文豪たちが挑んだ「北の迷宮」の探求は、読み手の心に拭い去れない孤高の余韻と、熾烈な知的好奇心を刻み込むことでしょう。