あらすじ
忘れられた名著であるJ.A.クローニンの「城砦」が夏川草介氏の新訳でよみがえりました。英国の医師であり小説家だったクローニンと、日本の医師である「神様のカルテ」シリーズの著者である夏川草介氏。この時代を越えたコラボで新たに誕生したのが「新訳 城砦」です。
本書は、医師の仕事に情熱を燃やす若き医師アンドルーが様々な苦難に立ち向かう半生を描いたものです。ある時は、医療制度に立ち向かい、ある時は、富や名声への渇望という自らの欲望に足をさらわれそうになりながら、希望の灯を絶やさない心の軌跡が描かれています。「何のために生きるのか?」「何のために働くのか?」そんな人生の難問に出逢った際、きっと本書から得るものがあるはずです。いつの時代であっても生きていればかならず遭遇する苦難や人生の落とし穴。あなたはどう対応しますか。
<第三部>
第一話 鉱山労務管理局
第二話 誰でもない
<第四部>
第一話 フォイ医師の診療所
第二話 医師たちの晩餐会
第三話 一番大切なこと
第四話 ローリエ
第五話 ルロワとフランシス
第六話 アイダの医療ホーム
第七話 変わりゆく日々
第八話 ヴィクトリア呼吸器病院
第九話 旧友の帰還
第十話 シェアへの小旅行
第十一話 プラザのグリルで
第十二話 スティルマン
第十三話 クロスウェイズ
第十四話 歯科医の頼み事
第十五話 悲劇
第十六話 崩壊
第十七話 再生への道
第十八話 新しい計画
第十九話 静夜
第二十話 森と風と空と
第二十一話 召喚状
第二十二話 城砦
作品考察・見どころ
クローニンが描く主人公アンドルーの軌跡は、高潔な理想が世俗の虚栄に侵食される人間の葛藤そのものです。下巻では成功の裏で魂を摩耗させる青年の苦悶が、医師作家・夏川草介氏の研ぎ澄まされた訳文によって、驚くほど生々しく蘇っています。良心と巨大なシステムの狭間で揺れ動く姿は、職種を問わず「何のために働くのか」を問う全ての現代人の胸を打つでしょう。 物語の白眉は、虚飾を捨て去り真の医術へと立ち向かう「再生」のプロセスにあります。権威という名の「城砦」へ挑むアンドルーの姿は、鋭い社会批評でありながら、人間に残された尊厳を描き出す一筋の希望です。この新訳は、読者の心にある情熱の残り火を激しく燃え上がらせ、進むべき道を照らす至高の人間讃歌となるはずです。