あらすじ
神経内視鏡手術は光学技術や手術器械の進歩により、1990年代以降劇的に進化した(Li KW, et al. Neurosurg Focus 19:E1, 2005, Prevedello DM, et al. J Neurosurg 107:206-213, 2007)。その起源は1910年代、Lespinasseによる水頭症に対する脳室内手術に遡るが(Walker ML. Neurosurg Clin N Am12:101-110, 2001)、現在では下垂体・傍鞍部腫瘍、頭蓋咽頭腫、傍正中頭蓋底髄膜腫、脊索腫/軟骨肉腫などに対する経鼻頭蓋底手術の主要機器として用いられ、小開頭手術や脳室内腫瘍・血腫除去手術にも応用されている。また、通常の顕微鏡では見えにくい領域を可視化する補助ツールとしての活用も進み、神経内視鏡手術は脳神経外科における重要な手技となった。--以上は、神経内視鏡手術の分野に身を置き、国内外の最先端技術を吸収しようと模索する私の認識である。しかし、本特集を手に取っている皆さんにはどう映るだろうか。「熟練者の間ではそうかもしれないが、依然として顕微鏡手術が主流である」「経鼻的下垂体腫瘍手術など一部の特殊な手術に用いるもので、それ以外の応用は発展途上である」「経鼻的下垂体腫瘍手術においても、依然として顕微鏡のほうが優れている」・・・・・・こうした認識をもつ方も少なくないのではないだろうか。つまり、神経内視鏡手術に関し、専門家と非専門家の間には大きなknowledge gapがあると考えられる。確かに、顕微鏡手術に慣れた術者にとって、神経内視鏡手術は馴染みやすいものではない。使用器械、内視鏡の操作法、術野解剖、2D画面上のhead-up surgeryなど、相違点は多い。さらに、初学者の入門編となるのは下垂体腺腫や第三脳室底開窓術であるが、これらの手術でさえ通常の施設では年間数件しか経験できず、十分な技術習得が困難である。加えて、硬膜内進展病変への経鼻内視鏡手術では難易度が格段に上がり、穿通枝や神経の剥離・髄液漏対策の頭蓋底再建技術など、高度な技術が求められる。その結果、多くの術者が年に数件の下垂体腺腫手術や第三脳室底開窓術にとどまり、ブレイクスルーを果たせていないのが現状ではないだろうか。思えば神経内視鏡手術は劇的に進化しながらも、その全貌を網羅した教材はほぼ存在しない。むしろ進化が急激であるが故に、標準化や体系化が追いついていないとも言える。本特集では、こうした現状に一石を投じるべく、「神経内視鏡手術のすべて」というテーマのもと、各分野の第一線で活躍する術者に執筆を依頼した。本特集の核となるのは“高解像度の再現可能性”、すなわち、「読者が精読すれば、実際の手術で模倣できる」というコンセプトである。各執筆者には、手術室でしか語られない叡智や術者の哲学まで盛り込んでいただいた。本特集が神経内視鏡手術の技術向上を志すすべての脳神経外科医にとって、有用な指針となることを願っている。(Editorialより)











