あらすじ
ISBN: 9784198659592ASIN: 4198659591
あるあらしの日、ムーミントロールは、
あたたかな家の中にいることが
とてもうれしく感じました。
そこで、ムーミンパパに
「この家をムーミン谷にたててくれてありがとう」
とお礼をいうと、パパは意外なことをいいます。
「さいしょにこの家をたてたのは、
ずっととおくの森の中の小川のそばでね、
そこから船の上に移して、
そしてりくの上に…」
パパは大こうずいのことを語り始めました。
ひどいあらしがやってきて、
海に出ていたパパは、船からなげだされました。
きしべのムーミンやしきが、
波にさらわれていくのが見えました。
ムーミンパパは、
なんとか高い木のてっぺんに
のぼることができました。
ムーミンママと小さなムーミントロールは
ぶじでいるでしょうか?
どうしたら、またあえるのでしょう…?
トーベ・ヤンソンの小説に、はじめて
ムーミンたちが登場する
『小さなトロールと大きな洪水』を
ムーミンパパの視点から描いた絵本です。

北欧の冷たい海と孤独、そして慈愛を物語へと昇華させたトーベ・ヤンソンは、単なる児童文学作家の枠を超え、現代の映像文化に深遠な哲学を刻み続ける稀有なクリエイターです。ヘルシンキの芸術家一家に生まれ、戦火の影が色濃い時代にムーミンという避難所を築き上げた彼女の歩みは、常に個人の自由と多様性への讃歌に満ちていました。彼女の筆致は極めて視覚的であり、風景そのものが感情を語るような映画的な叙述が特徴です。初期の風刺画やコミックから後年の大人向けの小説に至るまで、その作品群は世代や国境を越え、幾度となくアニメーションや映画へと形を変えてきました。それらの映像作品に通底するのは、彼女が愛した孤独を愛でる勇気と、不完全な者たちが織りなす優しい共同体の姿です。キャリアを通じて築かれたその物語世界は、視覚効果や技術が進化し続ける映画界においても決して色あせることはありません。統計的な成功を遥かに凌駕する彼女の真価は、観る者の心に静かな灯をともし、人生の不確実性を受け入れる知恵を与えてくれる点にあります。彼女が遺した言葉の断片は、今もなお世界中の映像作家たちに多大なインスピレーションを与え、物語が持つ真の癒やしの力を証明し続けています。