あらすじ
興行収入三百億円超。米国アカデミー賞長編アニメ映画賞も受賞した、宮崎駿監督の代表作を、森見登美彦氏らが徹底的に解剖する!
ISBN: 9784168120114ASIN: 4168120112
作品考察・見どころ
宮崎駿が描き出したこの叙事詩は、単なるファンタジーの枠を越え、現代社会における自己の喪失と再生を問う重厚な文学作品に他なりません。本作の核心は、名を奪われるという残酷な通過儀礼にあります。それは記号化された労働力として社会に組み込まれる現代人の悲哀であり、同時に自らのアイデンティティを死守しようとする魂の叫びでもあります。森見登美彦氏ら一流の書き手が本書で試みるのは、映像という美しき迷宮の裏側に潜む、民俗学的・神話的なコードの解読です。湯屋という閉鎖空間に凝縮された圧倒的な物量と祝祭感、そして千尋という無力な少女が働くことで世界と繋がっていく過程は、映像表現としても文学的なメタファーとしても極めて緻密に構築されています。言葉によって世界を縛り、言葉によって自由を取り戻す。その言語的ダイナミズムを解き明かす本書を読めば、かつて目にした映像が全く新しい色彩と意味を帯びて迫ってくるはずです。視覚の快楽を超えた先にある、物語の本質を喰らう喜び。これこそが、私たちが今再びこの名作を読み解くべき最大の理由なのです。