道尾秀介が仕掛ける本作は、単なるミステリの枠を越えた体験型芸術です。各章の末尾にある一枚の写真が、それまで読者が信じていた光景を鮮やかに反転させ、脳内の真実を音を立てて崩し去ります。言葉と視覚情報が交差する瞬間に浮かび上がる悪意や悲劇は、まさに紙の書物でしか成し得ない至高の技巧といえるでしょう。
いけない、という言葉に込められた多義的な重みが、登場人物たちの孤独と業を浮き彫りにします。読了後、自分が見ていた世界が如何に主観的で不確かなものかを痛感させられるはずです。平易な文体の奥底に潜む、底知れぬ人間の深淵。その驚愕と快感に、ぜひ身を委ねてみてください。