寺地はるなは、日常の歪みを鋭くも温かい眼差しで掬い上げる稀代の物語作家です。本作の魅力は、社会的な有用性という呪縛に縛られた家族が、長年積み重ねてきた「嘘」を剥ぎ取っていく過程にあります。虚飾の果てに露わになるのは、醜さではなく、不器用な人々が懸命に生き抜くために必要とした、切実で孤独な祈りの形なのです。
物語が解き明かすのは、破綻した嘘こそが時に真実以上に人を救うという逆説的な救済です。自己否定の淵にいた主人公が、家族の真の姿に触れて自らの足で立ち上がる姿は、読み手の魂を激しく揺さぶります。固定観念を鮮やかに打ち砕き、自分らしくあることの尊さを謳い上げる、強烈な磁力を放つ家族小説の傑作です。