一穂ミチ/古内一絵/田辺智加/君嶋彼方/錦見映理子/山本ゆり
美味しい食事の向こう側で、いまふたりの物語が始まる。ふたりの食卓に並ぶのは、決して甘いばかりのお菓子ではなかった。睦まじく見えるふたりの不穏な秘密。本能がかき乱される出会い。一言では言い表せない関係性、どうしても忘れられない人のことーー。食べて「なかったこと」にはならない濃厚な物語が気鋭の作家たちと食のエキスパートたちの手によって饗される。小説、エッセイに仕立てた10品の「恋と食」をどうぞ召し上がれ。
「食べる」という根源的な営みを、一穂ミチや山田詠美ら豪華執筆陣が多角的に切り取った本作は、単なる美食小説の枠を越えた、濃密な「人間関係の解剖録」です。食卓に並ぶ料理は、時に愛情の象徴となり、時に隠された毒や孤独を際立たせる装置として機能します。味覚を通じて剥き出しになる登場人物たちのエゴや切実な祈りが、読者の内面を静かに、かつ激しく揺さぶります。 珠玉の短編とエッセイが織りなすのは、甘美なだけではない人生の苦みや渋みです。五感を刺激する鮮烈な描写によって、喉を通る料理の温度とともに、ふたりの間に流れる不穏な空気や熱量までもが克明に立ち上がります。読了後、あなたは誰かと食卓を囲むことの重みと、その瞬間にしか味わえない官能的なまでの美しさに、きっと打ち震えるはずです。