あらすじ
人は、神様が書いたカルテをそれぞれ持っている。それを書き換えることは、人間にはできない―。信州松本平にある本庄病院は、なぜ「二十四時間、三百六十五日対応」の看板を掲げるようになったのか?(「彼岸過ぎまで」)。夏目漱石を敬愛し、悲しむことの苦手な内科医・栗原一止の学生時代(「有明」)と研修医時代(「神様のカルテ」)、その妻となる榛名の常念岳山行(「冬山記」)を描いた、「神様のカルテ」シリーズ初の短編集。二度の映画化と二度の本屋大賞ノミネートを経て、物語は原点へ。日本中を温かい心にする大ベストセラー最新作!
ISBN: 9784094064704ASIN: 4094064702
映画・ドラマ版との違い・考察
夏川草介氏の筆致は、夏目漱石への敬愛が滲む格調高い日本語が最大の魅力です。本作はシリーズの原点。一止の不器用な誠実さと信州の峻厳な自然が、魂を浄化するような瑞々しさで描かれます。医師としての使命感の芽生え、そして人間が変えられぬ運命をどう受け入れるかという深遠なテーマが、読者の胸を熱く焦がすはずです。 映像化作品では信州の絶景が視覚を圧倒しますが、原作テキストはその景色に宿る静謐な「祈り」を、一止の内省を通してより深く刻み込みます。文字でしか味わえない精神的な解像度と、映像が補完する色彩や光のコントラスト。両者を往還することで、物語は一つの福音として完成されるのです。