冷戦下という見えない火花が散る時代、国家の巨大な論理に翻弄される個人の精神を、三島由紀夫や筒井康隆ら文豪たちが鮮烈に描き出しています。本書の魅力は「謀」という言葉が示す通り、直接的な戦火ではなく、日常の裏側に潜む心理戦や情報戦の息詰まる緊張感にあります。名手たちの多様な筆致が、平和の仮面を剥ぎ取り、人間の業を白日の下にさらします。
中でも映像化された堀田善衞の「広場の孤独」は、テキストならではの内省的な深みが圧巻です。映画が捉えた都市の虚無感に対し、原作は知識人の内面に渦巻く焦燥と静止した時間を濃密に構築しています。映像と文学が共鳴し合うことで、孤独な魂が彷徨う広場のリアリティは、読者の心に消えない衝撃を残すことでしょう。