福井晴敏氏が描く宇宙世紀の深淵が、第15巻で「闇」として極限まで昇華されています。黒い三日月を背負うムーンガンダムは、ニュータイプが抱える孤独と憤怒の象徴であり、シャアという巨星を前に正気を失うユッタの姿は、個人の感情が歴史の濁流に呑み込まれる悲劇性を鮮烈に際立たせています。
映像版が放つ圧倒的な破壊の美学に対し、原作はテキストならではの「思考の残響」が白眉です。ミネバの切実な言葉がユッタの精神へ染み入る描写は、紙面における静止の美学があるからこそ、より深遠な響きを持って胸に迫ります。映像の動と原作の静、その見事な相乗効果が、宇宙世紀の真実を多層的に照らし出すのです。