卿の書簡集は、浪漫主義の化身たる男の魂がほとばしる「生の記録」です。1933年版の復刻である本作は、詩人が公に見せた虚飾を剥ぎ取り、その内側に潜む孤独と情熱、そして冷徹な自己分析を鮮烈に浮かび上がらせます。アンドレ・モーロワの序文が導くその先には、虚構の詩情を超えた、剥き出しのバイロンが呼吸しています。
最大の見所は、機知に富んだ辛辣な文体と、それと対極にある痛切な脆さの同居です。他者への皮肉や社会への義憤の合間に、ふと漏れる真摯な苦悩。言葉によって自己を神格化しつつ、同時に自らを解体していくような、一人の天才の格闘を目の当たりにできるでしょう。これこそ、紙上のテキストでしか味わえない、魂の震えそのものです。