あらすじ
『赤の神紋』のオーギュスト役を賭け、十日限りの舞台『メデュウサ』の幕が開いた。榛原憂月が創造した「完璧なハミル」を体現するワタル。観客を巻き込み、悪意さえ感じさせる常識を超えたケイの演技。葛川蛍と来宮ワタル、Wキャストに観客の降す審問は!?一方、舞台に呑み込まれてゆくケイを守ろうとする響生は、榛原の胸に刻印された十字架の秘密に向き合うことになり...。
ISBN: 4086008106ASIN: 4086008106
作品考察・見どころ
桑原水菜が描くのは、芸術という名の聖域で繰り広げられる魂の略奪劇です。本作の白眉は、舞台上で火花を散らす俳優たちの狂気と、表現という魔物に自己を削り取られていく緊張感にあります。単なる芸能界の物語を超え、神の如き創造主と、その獲物となる表現者が織り成す過酷な宿命が、読む者の魂を激しく揺さぶります。 特筆すべきは、虚構が現実を侵食し、役者の精神を極限まで追い詰める筆致の凄まじさです。榛原憂月の闇に呼応する登場人物たちの情念は、目眩を誘発させるほどの熱量を放っています。救済と破滅が隣り合わせの演劇的迷宮において、剥き出しになった人間の「業」を目撃したとき、あなたはかつてない戦慄と感動を覚えるはずです。