あらすじ
「...いた。あそこです」その声に、敏生も天本も龍村も目をあげ、そして息をのんだ。星も凍るような寒夜。静まりかえった裏庭に、じっと立ちつくして。やがて、つぶやいたのは、誰だったろうか。「...あれが...」彼らの目に等しく映っていたもの―それは、首のない大きな白い犬の姿だった...。最新刊、ネオ・オカルト・ノヴェル。
ISBN: 4062556219ASIN: 4062556219
作品考察・見どころ
椹野道流氏が描く本作の真髄は、怪異の恐ろしさの背後に潜む、人間の孤独と情愛のコントラストにあります。首のない白い犬という強烈な異形は、単なる恐怖の象徴ではなく、言葉にならぬ悲哀や執着の具現化に他なりません。理知的で情に厚い人々が闇に沈んだ真実を紐解く過程は、読み手の心の奥底にある倫理観を静かに揺さぶります。 美しくも残酷な筆致で綴られる物語は、論理では割り切れない「救済」の領域へと読者を誘います。著者は、オカルトという枠組みを借りて、魂の尊厳とは何かを問いかけているのです。寒夜の星空のような凛とした空気感の中で展開されるドラマの果てには、哀しみを超えた静謐な感動が待っています。