あらすじ
本書は弘化二年、小倉繁藏筆冩による『飯沼始末録』全十巻を複製したものである。
『飯沼始末録』は秀吉の大坂築城の際に飯沼勘兵衞が加藤幸助に討たれ、勘兵衞の子、初五郎が躄(いざり)になりながら箱根山中で敵討ちをする物語で、この物語を種に、司馬芝叟が時代や人名を變へて淨瑠璃「箱根霊驗躄仇討」とし、歌舞伎にもなつた。
『飯沼始末録』の筆冩本は幾つか知られてゐるが、筆冩年代や筆者により、字句の改變や文章の追加、削減などが成されるので、その差異の讀み比べも。書き本讀みの樂しみのひとつである。
本書の巻頭には、「八年を經て本望を達しいまだ關个原一亂敵味方を驚かして討死して名を萬天に上是後代武士之かゞみなりと云々」と、物語の概要を示してゐる。
本書の複製に用ゐた原書は、天地八寸三分(250mm)、左右幅五寸六分(169mm)、表紙は澁紙。後ろ表紙は大きく破損。前表紙には題箋の跡があるが、缺落してゐたので、假の題箋を着けた。蟲喰ひ箇所が多いが、文字部分の蟲喰ひ缺損は、比較的少ないといへる。全體に、くすみや染みがある。頁の畫像化に際しては、綴ぢを解いて、丁には合ひ紙を入れて畫像を作成した。
巻末には、「弘化二年 巳十二月写 小倉繁藏正重」とある。巻頭に「小倉正」、と「小正」、巻五の末に「小倉正」の墨印があり、執筆者の印かと思はれる。
本書『小倉繁藏筆冩本・飯沼始末録・全』の内容は、次の通り。
巻之壱
一 秀吉公 大坂城築給ふ事
附顯如上人石を献上之事
巻之弐
一 飯沼加藤水邊耳て酒宴之事
附飯沼勘平勝女尓契る事
一 勝女飯沼尓名殘をおしむ事
附加藤幸助横恋慕之事
巻之三
一 太閣秀吉公御忿りの事
附 初五郎敵討願ひおる事
一 太閣秀吉公左門の刀初五郎へ下置るゝ事
附飯沼家老谷十次兵衞旅立の事
巻之四
一 飯沼初五郎奧州へ行事
附谷十次兵衞山川耳ておぼるゝ事
一 老人初五郎へ単物を遣ハ須事
附九十九家へ有付事
巻之五
一 母娘之樣子を立聞の事
附初五郎娘越計る事
一 娘かよおもひ煩ふ事
附母新左衞門江訴詔之事
巻之六
一 新左衞門刀を渡し本心語る事
附初五郎奧州を出立之事
一 初五郎境之宿耳て熱病之事
附初五郎乞食と成る事
巻之七
一 初五郎下野領分耳て足越煩ふ事
附百姓喜助利害をとく事
一 初五郎百姓より車越も路ふ事
附加藤幸助伊勢参宮之事
巻之八
一 初五郎箱根へ車を古ぎ上る事
附松並主計武者修行之事
一 初五郎幸助尓廻りあふ事
附松並主計加勢を請合ふ事
巻之九
一 初五郎敵尓矢をゐる事
附主計敵之両腕を打落春事
一 秀吉公御誕生之事
附初五郎へ太閣より御加増之事
巻之十
一 勘平所々丹て之思を謝春る事
附九十九之娘飯沼へ嫁春る事
一 飯沼勘平敵陳を破る事
附池田備中之守と組合之事







































