本作は、英雄シャア・アズナブルの最期を、彼を支えた女性ナナイ・ミゲルの視点から再構築した深遠な人間ドラマです。サイコ・フレームという神秘のデバイスを介して紐解かれるのは、指導者としての重責と一人の男の孤独が交錯する「魂の遍歴」に他なりません。久織ちまき氏の繊細な筆致が、シャアの抱く虚無感と愛憎を鮮烈に浮き彫りにし、読者を宇宙世紀の深淵へと誘います。
映画版がアムロとシャアの宿命の対決という「動」のスペクタクルを極めたのに対し、本作は登場人物の内面に肉薄する「静」の傑作です。映像では語りきれなかったナナイの葛藤や過去の記憶が、物語に豊かな血肉を通わせる補完の役割を果たしています。両メディアを往還することで、読者は「逆襲のシャア」という巨大な神話の真実を、より多層的な視点から体験できるはずです。