倉田稼頭鬼氏が描く本作は、聖域であるはずの病棟が情欲の檻へと変貌する様を、耽美な筆致で綴った傑作です。献身という天使の仮面を剥ぎ取られ、一人の女としての業を暴かれていく看護師の心理描写は、単なる倒錯に留まりません。理性と本能が衝突し、自らの肉体に眠る悪魔に目覚めていく葛藤こそが、読者の心を揺さぶる文学的な核心と言えます。
白衣という潔白の象徴が泥濘に染まる瞬間を、著者は静寂と密室の緊張感を用いて鮮烈に描き出しています。倫理が崩壊し、狂おしい悦楽に溺れていく彼女の姿は、人間の奥底に潜む抑圧からの解放を象徴しているかのようです。一度ページを捲れば、その禁断の熱量に圧倒されることは間違いありません。