あらすじ
「はじめに」より本書の基は,大分大学で開講された教養教育科目「教養としての機械工学」の講義15回分で使用された資料と期末試験である.教養教育科目「教養としての機械工学」は,2016年開講予定で2015年度に人文系の受講者を想定してシラバスが作成され,2017年度から開講された. 本書のねらいは,「ものを作ることに理論が活用できる」ことを示すことである.大半の内容は義務教育で扱う範囲内に収まるが,温度の単位には高校の物理で扱う絶対温度を用いる.導入部の味付けの計算から段階を踏むことで,「光熱費1円当たりのエネルギの量の比較」や「IHヒーターとガスコンロの出力の比較」を学習者が自力でできるようになる.機械工学やプロジェクトマネジメントに基づいて,「誤差の取り扱い」「比熱や熱伝導」「利用する機器のエネルギーに関する情報の解釈」「水蒸気の性質」「催しの準備の段取り」を扱う. 主要な内容のキャッチフレーズは「レシピ無し,あるもので作る!パサつかないしっかり加熱!ガスと電気どちらにする?冷房は起きるまで切らない!イベントの準備どうする?」である.「レシピ無し,あるもので作る!」に関連する味付けの話題が1〜3章で扱われる.「パサつかないしっかり加熱!」に関する伝熱工学の内容は,5.5項で「鍋やフライパンの底の厚さ」の話題が扱われ,8章で加熱温度の話題が扱われ,10章で蒸気の性質が扱われる.電気とガスの比較に続いて,夏の夜の寝室の冷房の話題が扱われる.「イベントの準備どうする?」に関連して,11章でプロジェクト・マネジメントの作業分解図(WBS: Work Breakdown Structure)の作成が扱われる. 本書は料理中に読むものではない.導入の最初の問題では,炊飯器で海南鶏飯(ハイナンチーファン)を作る時の「味の素丸鶏がらスープ」をいれる量を計算する.計算条件やヒントは与えられる.解答例には,「調理中に行う簡略化した計算方法」と「調理中には不向きな方程式を用いる計算方法」の二通りある.考え方の説明が,解答例とは別になされる. いずれの内容も,一読で習熟できる内容ではない.質問を一度自力で考えた方が,解答例や説明を読む時のポイントを意識し易くなる.可能なら協働学習が望ましい.協働学習は,妥協せずに納得するまで質疑応答すると,曖昧な「理解したつもり」が許されず,学習者同士互いに負荷が高い.2020年の大分大学の教養教育科目「教養としての機械工学」では,対面授業と遠隔授業が同時に実施されたが,対面授業を受講した学生の習熟度は顕著に高かった. 本書にレシピや料理本を否定する意図はない.表紙の料理は,本書では扱わないが,テレビで放映された「みきママ」の料理を参考にしたものである.色や香りに関わるメイラード反応やカラメル化反応について,本書は扱わないが,他者の料理本が参考になっている.