本書の最大の魅力は、死者を救うという崇高な信念を掲げる法医学者の強烈なプロフェッショナリズムにあります。ニューヨーク仕込みの理論と技術が、日本の低い解剖率という厚い壁に挑む姿は、単なるミステリの枠を超えた、現代社会の制度的欠陥を鋭く突く社会派ドラマとしての重厚さを放っています。
さらに、多様化する性の問題に切り込むジェンダー班との共闘は、現代社会が抱える歪みを鮮やかに浮き彫りにします。遺体の声なき叫びを解読する緻密な科学的描写と、そこに宿る深い人間愛。真実に執着する者たちの熱き魂が、読者の死生観を激しく揺さぶり、ページをめくる手を止めさせない傑作です。