あらすじ
ある雪の日の夕方、借金を苦にして自殺した両親の墓参りに向かうため、ハンク・ミッチェルは兄とその友人とともに町はずれの道を車で走っていた。途中ひょんなことから、彼らは小型飛行機の残骸とパイロットの死体に出くわす。そこには、440万ドルの現金が詰まった袋が隠されていた。何も危険がなく誰にも害が及ばないことを自らに納得させ、三人はその金を保管し、いずれ自分たちで分けるためのごくシンプルな計画をたてた。だがその時から、ハンクの悪夢ははじまっていたのだった。スティーヴン・キング絶賛の天性のストーリー・テラー、衝撃のデビュー作。
ISBN: 9784594082116ASIN: 4594082114
作品考察・見どころ
スコット・B・スミスが本作で描き出したのは、善人が一歩踏み外した瞬間に広がる底なしの奈落です。金という魔力に魅入られ、正当化を積み重ねながら道徳が崩壊していく過程は、読者の倫理観を激しく揺さぶります。雪に閉ざされた静寂の中で、日常が修復不能な悪夢へと変貌する心理描写は、あまりにも緻密で冷徹です。 特筆すべきは、主人公の変節が持つ平凡な恐怖です。誰にでも起こりうる誘惑が、愛や信頼さえも裏切りへと変えていく様は、単なる犯罪小説を超え、人間の本質的な脆さを抉り出します。緻密に計算された絶望の連鎖が、最後の一瞬まで読む者の呼吸を奪い続ける、まさに悲劇の傑作と呼ぶにふさわしい一冊です。