初野晴
終末論が囁かれる荒廃した世界で孤独な女性のもとに現れたのは、言葉を話す不思議な赤毛のサルだった―ひとつ屋根の下、奇妙で幸せな一人と一匹の“ふたり暮らし”がはじまる。壊れかけた世界で見える、本当に大切なものとは―不条理で切ない絆を描き出す寓話ミステリー。
初野晴が放つ本作は、終末の静寂の中で生の輪郭を鮮烈に描く傑作です。滅びゆく世界の退廃と、言葉を解する猿との奇妙な日常という幻想的設定が見事に融合し、不条理な中にも震えるような優しさが通底しています。ミステリーの枠を超え、魂の救済を問う文学的な深みは圧巻です。 読者は物語を追う中で、孤独と繋がりの本質を突きつけられるでしょう。淡々とした筆致から滲み出る切なさは、困難な現実を生きる私達の心に静かな希望を灯します。寓話の果てに、真に大切なものが結晶となって現れる瞬間を、ぜひその目で見届けてください。
初野 晴 は、日本の小説家、推理作家。静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身。静岡県立清水南高等学校、法政大学工学部卒業。男性。作風は「ちょっと不思議系」。